このページのまとめ
- M&A仲介会社と契約してM&Aを行う場合、M&A仲介手数料が発生する
- M&A仲介手数料は相談料・着手金・月額報酬・中間金・成功報酬など
- 成功報酬の算出にはレーマン方式が用いられることが多い
- 手数料を払っても、適正な価格で売却できればトータルではプラスになる
「仲介手数料を支払い、M&A仲介会社に依頼する意味はあるのだろうか?」と気になっている経営者の方もいるのではないでしょうか?適正な価格で会社を売却するには、たとえ手数料がかかっても、仲介会社に依頼するのが得策です。
本記事ではM&A仲介手数料の算出方法や相場、安く抑える方法などを解説します。また、仲介手数料を支払わずにM&Aを進める方法も解説。ぜひ参考にしてください。
目次
M&A仲介手数料とは仲介会社に支払う費用
M&A仲介手数料とは、M&A成約に向けて業務委託契約を締結したM&A仲介会社などの専門家に対して支払う手数料のことです。M&Aを進めるにはさまざまなプロセスがあります。そのいずれのプロセスにおいても、専門的な知識や経験が欠かせません。そのため、M&Aを実施しようとする際には、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼するのが一般的です。
M&A仲介手数料は誰が払う?
M&A仲介手数料を支払うのは、M&A仲介会社などと業務委託契約を締結した当事会社です。
ここで、M&A仲介と類似性のある不動産取引のケースを考えてみましょう。不動産取引で不動産会社が売り手と買い手の仲介を行う場合、両手取引と片手取引という契約形態があります。
両手取引とは不動産会社が売り手と買い手双方と契約し、両者の間を取り持って成約を目指すものです。一方、片手取引とは、売り手・買い手がそれぞれ別の不動産会社と契約し、2社の不動産会社が売り手・買い手の交渉を代行します。
M&Aの業務委託契約の場合も、不動産取引のように以下の2種類の契約形態があります。
- 仲介契約
- アドバイザリー契約
それぞれの場合において、M&A仲介手数料を払うのが誰かを説明します。
仲介契約の場合
M&A仲介契約では、売り手・買い手が同一のM&A仲介会社と契約します。そのため、売り手・買い手双方が仲介会社に仲介手数料の支払いをします。
M&A仲介契約は、M&A仲介会社が売り手・買い手の双方と契約し、両者の間に入って取引を仲介する契約です。不動産取引でいうところの「両手取引」と同じです。
仲介契約の特徴は、M&A仲介会社が売り手・買い手の間を取り持ってM&Aの成約を目指すため、比較的、短期間で成約しやすい傾向があります。ただし、仲介契約の場合、売り手・買い手の折り合いをつけるように条件を調整するため、何らかの条件の妥協を求められることがあるでしょう。
アドバイザリー契約の場合
M&Aのアドバイザリー契約の場合、売り手・買い手 の各々が別のM&A仲介会社と契約します。そして、仲介会社と契約した会社がそれぞれ手数料を支払います。
M&Aのアドバイザリー契約では、売り手・買い手それぞれが別のM&A仲介会社と契約し、2社のM&A仲介会社が売り手・買い手の交渉を代行します。不動産取引でいう「片手取引」と同じです。
M&Aアドバイザリー契約の特徴は、M&A仲介会社が契約したクライアント側の最大限の利益獲得を目指すことです。売り手側であればできるだけ高額で売れるよう交渉し、買い手側であればできるだけ安価に買えるよう交渉します。金額以外にも、付帯条件などが有利になるよう目指すでしょう。
ただし、その分、交渉は長引きやすい傾向があります。交渉が見合わせとなる場合もあるかもしれません。
M&A仲介手数料は何で決まる?
M&A仲介手数料にはいくつかの種類がありますが、金額的に大部分を占めるのは成功報酬額です。成功報酬は、基準額に対して手数料率を掛け合わせて計算する「レーマン方式」という算出方法がよく用いられます。基準額は、M&A仲介会社によって設定が異なるので事前に確認しましょう。
成功報酬の基準額は、大別して以下の4種類が用いられています。
- 株式価値
- 企業価値
- 移動総資産
- オーナー受取額
それぞれのポイントは以下のとおりです。
株式価値 | 売り手企業の全株式を売却・買収する場合の金額 |
企業価値 | 株式価値に有利子負債を加算した金額 |
移動総資産 | 株式価値に負債総額を加算した金額。有利子負債以外も加算される |
オーナー受取額 | 売り手会社が経営者個人や親族から借りた役員借入金を加算した金額 |
ここでは、基準額として設定されるそれぞれの項目について解説します。
株式価値
株式価値とは、売り手企業の全株式を売却・買収する場合の金額のことです。中小企業のM&Aでよく用いられるスキーム(手法)である、株式譲渡の際の対価が該当します。
4種の基準額の中では、最も安価です。したがって、株式価値が成功報酬算定の基準額の場合、M&A仲介手数料も一番安いことになります。
企業価値
企業価値とは、株式価値に有利子負債を加算した金額を意味します。有利子負債とは、金融機関などから融資を受けた利子付きの借入金などが代表的な例です。
有利子負債が計上されている売り手企業の場合、その分が株式価値に加算されるため、成功報酬の基準額としては、株式価値だけの場合よりも高額となります。したがって、M&A仲介手数料もこちらの方が高くなる計算です。
移動総資産
移動総資産とは、株式価値に負債総額を加算した金額です。有利子負債以外の負債も加わります。有利子負債以外の負債の代表例は、未払金や買掛金などです。
移動総資産が成功報酬の基準額の場合、M&A仲介手数料は最も高額になります。
オーナー受取額
オーナー受取額とは、売り手会社が経営者個人や親族から借りた役員借入金を加算したものです。
M&Aを実施した場合、売り手は売却額に加えて役員借入金の分も合わせた金額を受け取ることになります。そのためM&A仲介会社は、売り手に対する成功報酬額の計算において、オーナー受取額を設定します。
M&A仲介手数料の種類と計算方法
M&A仲介で発生する主な手数料の種類は、以下のとおりです。
- 相談料
- 着手金
- 月額報酬
- 中間金
- 成功報酬
- デューデリジェンス費用
- M&A成立までの実費
- 企業価値評価費用
各手数料の概要については、以下をご参照ください。
相談料 | 正式契約前のタイミングで、顧客がM&A仲介会社に相談した際に発生する |
着手金 | 顧客がM&A仲介会社と業務委託契約を締結した際に発生する |
月額報酬 | 顧客がM&A仲介会社と業務委託契約を締結した後、M&Aが成約するまで顧問契約のような意味合いで毎月発生する |
中間金 | 売り手と買い手の間で基本合意書を締結した際に発生する |
成功報酬 | M&Aの成約時に発生する。レーマン方式によって算出する |
デューデリジェンス費用 | M&Aを行うにあたり、買い手側が売り手側企業の実態を事前に把握し、取引や価格について適切に判断するための調査費用 |
M&A成立までの実費 | M&Aの成約に向けて、M&A仲介会社が行った業務に関連して発生した費用。遠隔地の支店や工場を視察するための出張費や、契約書などの書類作成費用など |
企業価値評価費用 | M&Aで企業価値を調査する際に発生する費用。買い手側企業がM&Aアドバイザリー会社やM&A仲介会社に支払う費用で、対象企業の企業価値を算出し、企業価値評価レポートとしてまとめ、納品するために必要な費用 |
ここでは、それぞれのM&A仲介手数料の内容説明と、必要に応じて計算方法を説明します。M&Aの実施に必要な手数料のうち、代表的なものは相談料や着手金、成功報酬、デューデリジェンス費用などです。
なお、成約までにかかる仲介手数料は、たとえM&Aが成立しなかった場合にも返金されないことがほとんどです。M&A仲介会社を比較・検討する際は、料金体系や金額設定のほか、返金の有無についても確認しましょう。
相談料
M&A仲介手数料の相談料とは、正式契約する前段階において、M&A仲介会社に相談を行った際に発生する費用です。
現在、多くのM&A仲介会社では、無料相談を実施しています。しかし、中には1万円程度の相談料が発生するM&A仲介会社もあるので、事前によく確認してから相談しましょう。
着手金
M&A仲介手数料の着手金とは、M&A仲介会社と業務委託契約を締結した際に発生する費用です。
正式契約することでM&A仲介会社側は準備をスタートさせます。その準備にかかる費用を着手金で補っています。
完全成功報酬制のM&A仲介会社の場合、着手金は発生しません。
月額報酬
M&A仲介手数料の月額報酬とは、M&A仲介会社との業務委託契約締結後、一種の顧問契約のような意味合いでM&Aが成約するまで毎月発生する費用です。別称で「リテイナーフィー」ともいいます。
月額報酬が発生するM&A仲介会社は、あまりありません。
FA(ファイナンシャルアドバイザー)や経営コンサルタント系の会社がM&A仲介を行う場合に発生することが多い費用です。M&A成約までの期間が長くなった場合は費用がかさんでしまうので、注意が必要です。
完全成功報酬制のM&A仲介会社の場合、月額報酬は発生しません。
中間金
M&A仲介手数料の中間金とは、売り手・買い手間で基本合意書が締結されたときに発生する費用です。基本合意書とは、現時点で大筋合意した条件を両者で確認するために取り交わす書類です。
また、中間金は、成功報酬の一部の前払いという扱いです。想定される成功報酬額の10〜30%に該当する金額が請求されます。
中間金は完全成功報酬制のM&A仲介会社の場合、発生しません。
成功報酬
M&A仲介手数料の成功報酬とは、M&Aの成約時に発生する費用です。
レーマン方式によって算出
成功報酬は、レーマン方式を使って算出します。M&A仲介会社ごとに基準額の設定は異なるので、M&A仲介会社との契約締結前に、株式価値・企業価値・移動総資産・オーナー受取額のどれが基準額なのかよく確認して判断しましょう。
レーマン方式では、金額帯ごとに異なる手数料率を設定して金額を算出します。レーマン方式でよく用いられる手数料率の例は以下のとおりです。
- 基準額5億円までの部分:5%
- 基準額5億円超~10億円までの部分:4%
- 基準額10億円超~50億円までの部分:3%
- 基準額50億円超~100億円までの部分:2%
- 基準額100億円超の部分:1%
以下は基準額が株式価値で、株式価値=15億円だった場合の計算例です。
- 基準額5億円までの部分=5億円×5%=2,500万円
- 基準額5億円超~10億円までの部分=5億円×4%=2,000万円
- 基準額10億円超~50億円までの部分=5億円×3%=1,500万円
以上を合計し、この場合の成功報酬額は6,000万円となります。
最低手数料とは
M&A仲介手数料の最低手数料とは、成功報酬における最低請求額のことです。小規模なM&A仲介の場合、上述したレーマン方式で成功報酬額を計算しても、原価割れしてしまうような少額となることがあります。そのようなケースでは、最低手数料規定が優先され、その金額が請求されます。なお、最低手数料の金額設定は各社に委ねられています。
M&A仲介手数料の相場
M&A仲介手数料の種類ごとの相場は以下のとおりです。
なお、法定報酬額が設定されていないため、仲介会社やM&Aの規模によって金額は上下します。目安として参考にしてください。
M&A仲介手数料の種類 | 相場 |
着手金 | 無料~200万円 |
月額報酬 | 無料~200万円(毎月) |
中間金 | 無料~200万円 |
成功報酬 | M&Aの成約規模により変動 |
最低手数料 | 200万円〜2,000万円 |
デューデリジェンス費用 | 200万円(売り手は無料) |
企業価値評価費用 | 無料~数十万円 |
仲介業務に伴う出張費など | 実費 |
相場を知ったうえでいくつかのM&A仲介会社に問い合わせて、見積もりをとってみることがおすすめです。
M&A仲介手数料以外の費用
M&A仲介手数料以外の主な費用としては、以下の3つが挙げられます。
- デューデリジェンス費用
- M&A成立までの費用
- 企業価値評価費用
各費用の概要については、以下をご参照ください。
デューデリジェンス費用 | 基本合意書締結後に買い手が売り手に対して行う、経営状況の精微な調査 |
M&A成立までの費用 | M&A成約に向けて行った業務に関連して発生した費用 |
企業価値評価費用 | 対象企業の企業価値を算定する費用 |
ここからは、それぞれの費用について解説します。
デューデリジェンス費用
一般にデューデリジェンスとは、基本合意書締結後に買い手が売り手に対して行う、経営状況の精微な調査のことです。デューデリジェンス費用は、この調査にかかる費用です。
デューデリジェンスは、財務・会計・法務・労務・IT・ビジネスなどの分野ごとに、士業などの専門家を起用して行われます。
デューデリジェンス費用は買い手が負担します。
M&A成立までの実費
M&A仲介会社が、M&A成約に向けて行った業務に関連して発生した費用は、クライアントに対して実費請求されます。遠隔地の支店や工場の視察などで発生する出張費などが代表例です。
企業価値評価費用
企業価値評価とは、対象企業の企業価値を金額で算定することです。「バリュエーション」とも呼ばれます。企業価値評価をベースにM&Aでの売却額・買収額を検討するのが一般的です。
無料で簡易的な企業価値評価を行う仲介会社もあれば、公認会計士などを起用して数十万円の費用で行う会社もあります。一方で、成功報酬に組み込んでいるために特段の請求を行わないケースもあります。
M&A仲介手数料の会計・税務処理は?
M&A仲介手数料の会計処理・税務処理は、M&A仲介手数料の種類や発生するタイミングにより解釈が変わります。
M&Aが成約してから発生するM&A仲介手数料は、付随費用としてM&Aの対価に加算して計上します。一方、成約する前に発生したM&A仲介手数料は、費用として損金扱いです。
成功報酬は対価に加算し、M&A実施前の市場調査や戦略立案のコンサルタント費用などの成功報酬以外のM&A仲介手数料は、損金算入できます。
M&A仲介会社が担う役割
M&Aは、一般的に以下の流れで行います。
※の印が付いたものは一般的にM&A仲介会社がサポートを行う範囲です(詳細は会社によって異なります)
フェーズ |
内容 |
事前準備 |
※1.M&Aを実施するかどうかなど、初歩的な相談 |
2.自社分析 |
|
3.M&A仲介会社との契約 |
|
マッチングと条件交渉 |
※4.M&Aのスケジュール策定 |
※5.M&Aの相手先の選定 |
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※6.秘密保持契約の締結(NDA) |
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※7.経営者同士の面談 |
|
※8.条件交渉 |
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※9.基本条件の合意 |
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※10.デューデリジェンス |
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契約 |
※11.最終契約書の締結 |
※12.クロージング |
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契約後 |
※13.ディスクロジャー(M&A成立の開示) |
※14.PMI(経営統合後のプロセス) |
M&A仲介会社は契約を締結後、PMIまで関わるケースが多くみられます。さらに、事前準備の段階における、初歩的な相談をM&A仲介会社にするケースも少なくありません。ここでは、M&A仲介会社が担う主な役割を解説します。
事前準備
自社にとってM&Aがベストな選択であるかどうかを考え、M&Aにおいて自社の譲れない条件などを整理しておきます。この段階の初歩的な相談も、M&A仲介会社にのってもらえることがほとんどです。準備段階では、自社の経営状況や純資産、負債などを正確に把握しておくことも大切です。M&Aの実施をすることが決まったら、M&A仲介会社との契約を締結します。
マッチングと条件交渉
M&A仲介会社は、全体のスケジュールを策定します。M&Aには、売り手側・買い手側企業が関与するだけでなく、デューデリジェンスを行う専門家や取引先、従業員など関係者との調整も必要となります。そのため、M&Aのスケジュール策定は、M&Aの成否に大きく影響する大切な工程の1つです。
M&A仲介会社は、M&Aの相手側企業の選定や、条件交渉において重要な役割を担います。自社から直接、特定の相手先と交渉するよりも、M&A仲介会社を通して交渉を進めると、スムーズにいく場合があります。M&A仲介会社が間に入り、自社名を伏せて相手先企業にM&Aの関心の有無を探れるため、M&Aの相手先企業の効率的な絞り込みも可能です。
条件交渉においても、売り手側企業・買い手側企業のいずれも、相手に要望を直接ぶつけるのは難しいため、M&A仲介会社を通すことで、本音の交渉が実現します。
はじめは交渉がうまく進まなくても、M&A仲介会社が間に入り、お互いの譲歩できるポイントと譲歩できないポイントを潰していくことで、最終的にはM&A交渉が成立するパターンもあります。
各専門家の紹介も、M&A仲介会社に依頼することが可能です。デューデリジェンスは、弁護士や公認会計士、税理士などの専門家へ依頼して実施します。M&A仲介会社にこれらの専門家が在籍していたり、つながりがあったりするため、当事者が専門家を探す手間が省けるでしょう。
双方の意向がM&A契約を締結する方向で固まったら、M&Aのスキームや条件に関する暫定的な内容などを盛り込んだ基本合意書を取り交わし、デューデリジェンスを実施します。
契約
ここまでの交渉や基本合意、デューデリジェンスを経て、最終契約に向けた交渉が開始され、クロージングを行います。M&Aにおけるクロージングとは、株式譲渡や事業譲渡などのM&A取引が実行され、M&Aの対象となる会社あるいは事業の経営に関する権利が、売り手側から買い手側に移転される手続きのことです。 最終契約の手続きについても、M&A仲介会社が間に入って進めます。
契約後
クロージングによって経営権の移転手続きを行った後は、M&A成立の開示やPMI(ポストマージャーインテグレーション)など、M&Aの事後処理を行います。PMIとは、M&A後の統合効果を最大化するための統合プロセスのことです。M&A仲介会社は、PMIの支援も行うことがあります。具体的には、統合プランの策定や進捗管理、新組織体制を定着させるための各種マニュアルの整備や、M&A後の会計・税務上の実務処理に関するアドバイスなどを行うケースがみられます。
M&A仲介会社に依頼するメリット
M&A仲介会社に依頼するメリットとして挙げられるのは、主に以下の3点です。
- 仲介会社のネットワークから相手先企業を探せる
- 取引条件や金額の妥当性を確保できる
- M&A実行前の準備に関する相談にも乗ってもらえる
各メリットを確認しましょう。
仲介会社のネットワークから相手先企業を探せる
M&A仲介会社に依頼するメリットとしては、M&A仲介会社が保有するネットワークを活用し、相手先企業を探せる点が挙げられます。M&A仲介会社のネットワークには、仲介会社の提携先や取引先なども含まれます。
M&A仲介会社に依頼せずに、自力で相手先企業を見つけるのは困難であることが一般的です。相手先企業を自力で探す場合、真っ先にイメージされるのは取引先であることも多いと考えられますが、M&Aの候補が限定されるため、いつまでも相手先企業が決まらない可能性が高いです。
しかしM&A仲介会社に依頼することで、顧客企業にとって適切な相手先企業を見つけてくれるだけでなく、顧客企業の風土にマッチするか、シナジー効果が見込めるかといった観点から提案してくれます。
M&Aの相手先企業は、投資銀行をはじめとした金融機関やマッチングサイトの所有するネットワークからも探せます。たとえば投資銀行はM&Aのサポート以外に、資金調達の支援も行う点が強みであり、マッチングサイトは、低コストで相手先企業を探せる点がメリットといえるでしょう。
しかし、金融機関やマッチングサイトの場合、受けられるサポート範囲は広くないことが少なくありません。その点、M&A仲介会社はPMIまでサポートを受けられることが多く、はじめてM&Aを行う企業でも安心して取引を行えます。
取引条件や金額の妥当性を確保できる
M&Aの取引条件や金額の妥当性を確保できるのも、M&A仲介会社に依頼するメリットです。M&A仲介会社に依頼せずに当事者のみでM&Aの交渉を進めると、提示された金額が妥当かどうかの判断が難しいこともあります。
企業価値について知識がないと、相場よりも大幅に安い価格で自社を売却してしまう可能性があります。買い手側企業も、本来の企業価値よりも割高な価格で買収してしまうリスクを回避しなければなりません。
M&A仲介会社は、過去の取引事例などからおおよその妥当な金額が判断できます。そのため、顧客企業が損をしないためのアドバイスを受けることが可能です。
M&A実行前の準備に関する相談にも乗ってもらえる
M&A仲介会社に依頼することで、M&A実行前の準備に関する相談に乗ってもらえることも多いです。たとえば、「M&Aを行うにあたり、どのような準備が必要か」という相談をする企業は珍しくありません。
M&Aを進めるうえで、売り手側企業と買い手側企業では、必要な準備が異なります。とくに初めてM&Aを実施する場合、M&A仲介会社に依頼せず自社だけで行うとすると、準備段階から何をすべきかよいかわからない可能性が高いです。
また、「M&Aが完了するまでにどの程度の期間を要するか」も、よくある相談の1つです。M&Aの実行前の準備や、各種手続きにかかる所要時間などの情報を把握することは、M&A成功には欠かせません。そのため、実行前の準備に関する相談先があることだけでも、大きなアドバンテージになり得ます。
そのほか買い手側企業の場合は、M&A仲介会社に対して、M&Aに必要な資金やその調達方法に関する相談をするケースも見受けられます。
M&A仲介会社に依頼する際の注意点
M&A仲介会社に依頼する際の注意点は、主に以下の2点です。
- 着手金や中間金は返金されない
- 成功報酬に最低報酬額が設定されていることがある
それぞれの内容を解説します。
着手金や中間金は返金されない
M&A仲介会社と契約を結び、着手金や中間金を支払うと、結果としてM&Aが成功しなかった場合でも、それらは返金されないことに注意が必要です。M&Aが途中でストップした場合など、着手金や中間金が戻ってこないリスクを避けるために、これらの手数料が無料のM&A仲介会社を選ぶのも、選択肢の1つといえるでしょう。
成功報酬に最低報酬額が設定されていることがある
成功報酬には、最低報酬額が設定されていることがあります。最低報酬額はM&Aの成約規模により変動するものの、大手M&A仲介会社の場合は1,000万円から2,000万円程度、中規模あるいは小規模のM&A仲介会社の場合は300万円から500万円程度が相場です。M&A仲介会社によっては、公式サイトでは公表していないこともあるため、契約前に確認しておくことをおすすめします。
M&A仲介手数料を抑える3つの方法
ここでは、M&A仲介手数料の金額をなるべく安く抑える方法として以下の3つを提言します。
- 複数の仲介会社から見積もりを取る
- 成功報酬算定基準額が低い仲介会社を選ぶ
- 成功報酬だけで行ってくれる仲介会社に依頼する
いずれも業務委託契約を締結するまでの事前確認がポイントです。契約してからでは遅いので注意しましょう。
複数の仲介会社から見積もりを取る
ほとんどのM&A仲介会社は、事前の無料相談を実施しています。契約締結を決める前に、気になる会社複数からM&A仲介手数料の見積もりを取り、内容をよく比較して選びましょう。
成功報酬算定基準額が低い仲介会社を選ぶ
先述したとおり、成功報酬算定の基準額には株式価値基準・企業価値基準・移動総資産基準・オーナー受取額基準の4種類があります。この4種類のなかでは、株式価値を算定基準額にしているケースが安価な仲介手数料になりやすい傾向があります。成功報酬算定の基準額に株式価値を設定しているM&A仲介会社を探しましょう。
成功報酬だけで行ってくれる仲介会社に依頼する
支払う手数料が成功報酬だけの仲介会社に依頼するのも、M&A仲介手数料を抑えるために有効な方法です。
M&Aの手数料は各仲介会社が独自に設定しており、成功報酬以外にも着手金や中間金などのさまざまな手数料が発生することがあります。
その点、手数料が成功報酬のみ、つまり完全成功報酬の料金体系を採用しているM&A仲介会社に依頼すれば、コストを安く抑えられます。また、料金体系のわかりやすさもメリットといえるでしょう。
仲介手数料を支払わずにM&Aを行う方法
M&A仲介会社に依頼せずに、自ら相手側企業とやり取りする直接交渉を行えば、仲介手数料を支払う必要がありません。近年はWeb上にM&Aプラットフォームと呼ばれる、会社を売りたい側と買いたい側をマッチングしてくれるサービスも存在します。このようなプラットフォームのサービスを活用し、当事者のみで直接交渉することもできます。
しかし、M&Aに関する知識がない当事者同士で交渉を行う際に、M&Aの適正相場がわからない点がネックになる可能性が高いです。また、利害の対立により、相手先企業との信頼関係が壊れてしまうリスクも存在します。
M&A仲介会社に依頼するのが難しい場合は、顧問税理士や会計士、あるいは「事業引継ぎ支援センター」などの公的機関に相談してみるのも一案です。相談相手を作っておくだけでも、自分一人でM&Aを行うよりも、スムーズに事が進む場合があるためです。
仲介手数料がかかっても仲介会社の利用がおすすめ
M&A仲介会社を利用せずに、自力でM&Aを行うという選択肢もあります。しかし、たとえ仲介手数料がかかっても仲介会社を利用したほうが、トータルでは得られるメリットが大きいと考えられます。
M&A仲介会社が担う役割は、売り手側企業と買い手側企業のマッチング以外にも、マッチング前の相談先となったり全体スケジュールの策定をしたりとさまざまです。
これらのサポートを受けずに、すべて自社のみで行うには、多岐にわたる専門知識と経験と多大な労力を要します。場合によっては、本業に支障をきたしかねません。
また、M&A仲介会社に依頼すれば、M&Aの取引条件や金額の妥当性を確保できるため、直接交渉でM&Aを進めるよりも適正な価格で売却できる可能性が高まります。そのため、売却額が上乗せできれば、トータルではプラスになる可能性が高いといえるでしょう。
関連記事:M&Aとは?会社が事業承継するメリットや手法を紹介!案件増加の理由も解説
まとめ
M&A仲介手数料のうち、金額的に大部分を占めるのは成功報酬です。成功報酬の算出には、基準額に対して手数料率を掛け合わせるレーマン方式が用いられることが多く、レーマン方式で使う基準額には、「株式価値」「企業価値」「移動総資産」「オーナー受取額」の4種類があります。
成功報酬以外の、M&A仲介で発生する主な手数料は、「相談料」「着手金」「月額報酬」「中間金」です。
M&A仲介手数料を抑えるには、複数の仲介会社から見積もりを取ることや、成功報酬算定基準額が低い仲介会社を選ぶことがポイントです。成功報酬だけで行ってくれる仲介会社に依頼するのもおすすめです。
M&A仲介会社を利用せずに、直接交渉をする方法もあるものの、適正な価格での売却が難しい面があります。手数料がかかったとしても、売却額を上乗せできる分、仲介会社に依頼したほうがトータルではプラスになる可能性が高いといえるでしょう。
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レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、M&Aに関する豊富な知見を持っており、実績を積み重ねたコンサルタントが相談から成約まで一貫してサポートを行っています。
料金に関しては、M&Aの成約時に料金が発生する、完全成功報酬型です。M&A成約まで、無料でご利用いただけます(譲受側のみ中間金あり)。
無料相談も実施しています。子会社化を検討している際には、お気軽にお問い合わせください。