税理士事務所・法人のM&A動向やメリットを解説!相場価格や事例も紹介

2024年8月8日

税理士事務所・法人のM&A動向やメリットを解説!相場価格や事例も紹介

このページのまとめ

  • 税理士業界では業界再編が進んでおり、M&Aが活発化している
  • 税理士事務所・法人のM&Aは、税理士の高齢化や人材不足の解決策となる
  • 税理士事務所・法人のM&Aの主な手法は、出資持分譲渡・事業譲渡・合併の3つ
  • 税理士事務所・法人のM&Aでは、株式譲渡は利用できない
  • M&Aの準備には負担がかかるため、税理士事務所・法人は早めに準備を始めよう

「税理士事務所・法人のM&Aの現況は?」と、気になっている方もいるのではないでしょうか。
税理士業界では税理士の高齢化や人材不足も相まって、業界再編のためのM&Aが増加しています。

本コラムでは、税理士事務所・法人のM&Aの動向やよく利用されるスキームを紹介します。
また、税理士事務所・法人がM&Aを行うメリットを、譲渡側・譲受側の立場に分けて解説します。
そのほか、税理士業界におけるM&Aの価格相場や事例も紹介するので参考にしてください。

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税理士業界とは

税理士業界とは、税理士事務所や税理士法人が属する業界です。
日本標準産業分類による事業区分においては、大分類では「学術研究、専門・技術サービス業」に分類され、中分類では「専門サービス業」に分類されます。

税理士の登録者数は年々増加しており、2023年度には81,280人になりました。

参照元:
国税庁『日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-J金融業、保険業、K不動産業、物品賃貸業、L学術研究、専門・技術サービス業、M宿泊業、飲食サービス業)
国税庁『税理士制度

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税理士事務所と税理士法人の違い

「税理士事務所」と「税理士法人」は、同じものを指す言葉ではありません。
税理士事務所と税理士法人は、事業形態に違いがあります。

税理士事務所とは

税理士事務所とは、税理士が個人事業主として営む事業形態です。

代表者が税理士である必要があります。
なお代表者である税理士が業務を遂行できない状態になった場合、事務所は閉鎖することになります。

税理士法人とは

税理士法人とは、2名以上の税理士が共同して設立する特別法人です。

税理士法人においては、支店を展開することが可能です。全国に支店を展開する税理士法人もいます。
また、代表者が業務を遂行できない状態になった場合も、組織自体は維持できます。

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税理士事務所・法人のM&A動向

税理士業界において、M&Aは活発化しています。
税理士事務所・法人のM&Aが増えている主な理由は、下記のとおりです。

  • M&Aが浸透してきている
  • 業界再編が進んでいる
  • 税理士の高齢化が進行している
  • 人材不足に窮している

M&A自体の認知度が低かった頃は、自力で事業を続けられなくなった際の選択肢にM&Aは挙がらず、廃業が選ばれることが多くありました。
しかし現在ではM&Aが浸透し、廃業以外の選択肢としてM&Aが検討されるようになりました。

また、税理士業界において業界再編が推進されていることや、税理士の高齢化および人材不足などの問題に直面していることが、M&A件数の増加の背景にあります。

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【売り手側】税理士事務所・法人M&Aの4つのメリット

税理士事務所・法人M&Aの売り手側のメリットは、主に下記の4つです。

  • 後継者問題を解決できる
  • 譲渡による利益を獲得できる
  • 従業員の雇用を守れる
  • クライアントの引継ぎができる

以下で、それぞれのメリットについて詳しく解説します。

後継者問題を解決できる

税理士事務所・法人をM&Aで譲渡することで、後継者不在の悩みが解決できます。
税理士事務所・法人の譲り先を見つけることができれば、廃業することなく引退することが可能です。

譲渡による利益を獲得できる

税理士事務所・法人M&Aで売却するメリットは、譲渡益を得られることです。

ただ閉鎖する場合は利益を得られないうえ、廃業費用がかかりますが、M&Aを活用すれば譲渡益を得られます。

従業員の雇用を守れる

税理士事務所・法人M&Aで譲渡するメリットの一つは、従業員の雇用を守れることです。

税理士事務所・法人を閉鎖すると、事務所・法人に勤めている従業員は雇用を失うことになります。
M&Aによって譲り先に従業員を承継することができれば、従業員は雇用を失うことなく働き続けることが可能です。
従業員を路頭に迷わせることはありません。

クライアントの引継ぎができる

税理士事務所・法人M&Aを行うことで、クライアントを承継することが可能です。
クライアントを困らせてしまう事態を回避できるでしょう。

ただし、税理士の仕事は信頼関係が重要であるため、クライアントが引継ぎを拒否する可能性もあります。
引継ぎを検討する際は、クライアントと譲り先に意向を確認しておきましょう。

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【買い手側】税理士事務所・法人M&Aの4つのメリット

税理士事務所・法人M&Aの買い手側のメリットは、主に下記の4つです。

  • 支店を増やせる
  • サービスの質向上ができる
  • 人材を確保できる
  • 収益を増やせる

以下で、それぞれのメリットについて詳しく解説します。

支店を増やせる

税理士事務所・法人M&Aで買収するメリットは、支店を増やせることです。
特にエリア拡大を目指している場合、すでに地域に根差した税理士事務所・法人をM&Aによって取得することは、有効な手段になります。
税理士事務所・法人を新たに設立するよりも、円滑にネットワークを拡げられるでしょう。

サービスの質向上ができる

税理士事務所・法人M&Aを行うことにより、譲渡側が保有するネットワークやノウハウを獲得できます。
自分たちが持っているネットワーク・ノウハウと融合させることで、大きなシナジー効果の創出が期待されます。

人材を確保できる

税理士事務所・法人M&Aのメリットの一つは、人材を確保できることです。

税理士は資格が必要な職業であり、実務経験を積むことも大切です。
すでに税理士としての経験を積んでいる人を承継できることは、M&Aの大きなメリットだといえるでしょう。

収益を増やせる

税理士事務所・法人M&Aで買収することによって、収益を増やせることがメリットです。

税理士事務所・法人M&Aによってクライアントを引き継いだり、エリアを拡大したりすることができれば、その分収益アップが期待できます。

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税理士事務所・法人M&Aで用いるスキーム

税理士事務所は個人事業主であり、税理士法人は特別法人です。
そのため、一般的な株式会社でよく用いられる「株式譲渡」ではなく、下記の3つのスキームが利用されることが多いです。

  • 出資持分譲渡
  • 事業譲渡
  • 合併

各スキームについて詳しく解説します。

出資持分譲渡

出資持分とは、税理士法人を設立したときに金銭等の出資をした人が、出資額に応じて所有する財産権のことです。
出資持分譲渡とは、出資持分を譲り渡すことにより、実質的な経営権を移行させる手法です。

出資持分の価値算定を行い、評価額に応じた対価を支払い、出資持分譲渡を行います。
その後、社員である税理士の入れ替えを行い、経営権を移行させます。

出資持分譲渡においては、出資持分の評価額が高くなる点に注意が必要です。
出資持分の評価を下げたり、資金を準備したりするなどの対策をしましょう。

事業譲渡

事業譲渡とは、事業の一部あるいは全部を第三者に譲り渡すM&Aの手法です。
事業譲渡は税理士事務所も税理士法人も利用できます。

事業譲渡の手法を採択した場合、経営権自体は移行しません。
M&A後も経営を継続させられることが事業譲渡の特徴です。
選択した売買対象の事業のみを譲り渡すため、買い手にとっても債務を引き継ぐリスクがない点がメリットになります。

一方で、事業譲渡は個別承継であることから、手続きが複雑になります。
また、競業避止義務が課されるため、M&A後に事業を継続しようと考えている場合は注意が必要です。

合併

合併とは、複数の既存法人を1つの法人格に統合するM&Aのスキームです。
合併には「新設合併」と「吸収合併」の2つの手法がありますが、手続きの簡便さから吸収合併がよく選ばれます。
合併後は、売り手側の税理士は共同経営者となり、引き続き経営に携わっていくことになります。

合併では複数の法人が統合されるため、M&A後の統合作業に特に注力する必要があります。
組織風土や管理体制、システム面などにおいて、スムーズな運営ができるように統合作業を行いましょう。

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税理士事務所・法人がM&Aを行うときの3つの注意点

税理士事務所・法人がM&Aを行うときは、下記の3つの点に注意しましょう。

  • クライアント契約解消の可能性がある
  • 株式譲渡は選択できない
  • M&Aの準備にかかる負担が大きい

それぞれの注意点について、詳しく解説します。

クライアント契約解消の可能性がある

税理士事務所・法人がM&Aを実施したことをきっかけに、クライアントとの契約が解約されてしまうおそれがあります。

税理士の仕事は、クライアントとの信頼関係のもとに成り立っています。
もともと担当していた税理士がそのまま継続してクライアントを担当するケースでは問題ありませんが、M&Aを機に税理士が退職・引退する場合は注意が必要です。
その税理士に信頼を寄せていたクライアントは、税理士の退職・引退にともない契約を解約する可能性が高いでしょう。

株式譲渡は選択できない

株式譲渡は手続きが比較的簡易で、一般的なM&Aではよく活用されるスキームです。
しかし、個人事業主の税理士事務所や特別法人である税理士法人は、株式を発行していないため、株式譲渡は利用できません。

M&Aの準備にかかる負担が大きい

M&Aを実施するためには、周到な準備が必要です。
M&Aに関する資料の作成や価値算定、相手との交渉、法的な手続きなど、完了までのプロセスは煩雑です。

これらのM&Aの準備を、税理士としての通常業務に加えて取り組むことになります。
多大な負担がかかるため、M&Aの専門家である仲介業者などを利用することも一つの手です。
M&Aをスムーズに進められるようにしましょう。

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税理士事務所・法人M&Aの相場価格

税理士業界でのM&Aにおける売却・買収の相場価格は、「顧問料」か「営業利益」のどちらかを基準にして決定することが多いです。

個人事業主である税理士事務所がM&Aを行う場合は、1年間の顧問料を取引価格に設定することがあります。

税理士法人がM&Aを行う場合は、過去2~3年分の営業利益を参考にすることが多いです。

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税理士事務所・法人M&Aの3つの事例

最後に、税理士業界で行われたM&Aの事例を3つ紹介します。

  • 税理士法人蓑・高山会計とテイエムエス税理士法人のM&A事例
  • 税理士法人サンライズと児玉秀明税理士・行政書士事務所のM&A事例
  • 税理士法人TOTALと井上総合会計事務所のM&A事例

各事例について、詳しく解説します。

税理士法人蓑・高山会計とテイエムエス税理士法人のM&A事例

2023年9月、税理士法人蓑・高山会計とテイエムエス税理士法人は吸収合併を実施しました。
存続法人は税理士法人蓑・高山会計です。
吸収合併の実施後、法人名を「れん税理士法人」に変更しています。

譲受側譲渡側
税理士法人蓑・高山会計テイエムエス税理士法人

税理士法人蓑・高山会計は、本社を千葉県に構え、そのほかに東京都と石川県に事務所を持っている税理士法人です。
テイエムエス税理士法人は、本社が千葉県にあり、東京都にも事務所を構える税理士法人です。

今回の合併によってスタッフが総勢60名になり、さらに、千葉・東京・石川エリアの事務所拡充がかないました。
両者が保有する知識の融合やM&Aによるスケールメリットを活用し、さらに高品質なサービスを提供するとのことです。

参照元:れん税理士法人『経営統合と法人名改称のご案内

税理士法人サンライズと児玉秀明税理士・行政書士事務所のM&A事例

2022年10月、税理士法人サンライズと児玉秀明税理士・行政書士事務所は吸収合併を行いました。
存続法人は税理士法人サンライズです。

譲受側譲渡側
税理士法人サンライズ児玉秀明税理士・行政書士事務所

本M&Aの実施により、税理士法人サンライズの拠点は「新潟西事務所」「新潟中央事務所」「新潟白山事務所」の3つになりました。

税理士法人サンライズは、個人事業主と比較したときの税理士法人の強みとして、永続性と人力・資金力を事業に生かせることを挙げています。
合併を行うことで事務所の体制を強化することができ、ひいては顧客の利益につながると考え、今回の合併を決断しました。

参照元:税理士法人サンライズ『合併のお知らせ

税理士法人TOTALと井上総合会計事務所のM&A事例

2013年4月、税理士法人TOTALと井上総合会計事務所は吸収合併を行いました。
存続法人が税理士法人TOTALとなる、吸収合併です。

譲受側譲渡側
税理士法人TOTAL井上総合会計事務所

井上総合会計事務所は1989年に開設され、12名の職員を抱える税理士事務所でした。
しかし代表者が60歳を超えた頃に自身の体力・気力・経営力の限界を感じ、M&Aを検討しました。

井上総合会計事務所の代表は税理士法人TOTALを「若い力を生かして多方面で顧客の支援がかなう組織だ」と評価しており、合併後は社員税理士として引き続き顧客のニーズに応えられるよう尽力するとしています。

参照元:税理士法人TOTAL『井上貴司からの挨拶

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まとめ

税理士業界では、業界再編が進められており、M&Aが積極的に実施されています。
また、税理士の高齢化や税理士不足の解決策としても、M&Aが活用されています。

税理士事務所・法人のM&Aで主に用いられる手法は、出資持分譲渡・事業譲渡・合併の3つです。
M&Aの完了までには煩雑なプロセスを踏む必要があるため、買収や売却を検討している場合は早めに動き出しましょう。

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