再生型M&Aとは?一般的なM&Aとの違いや方式・フローを解説

2024年2月2日

再生型M&Aとは?一般的なM&Aとの違いや方式・フローを解説

このページのまとめ

  • 再生型M&Aとは、清算も視野に入れつつスポンサー企業を探して再生を目指す手法
  • 再生型M&Aは、通常のM&Aと比べると難易度が高い
  • 再生型M&Aは債務超過や経常損益が赤字のときなどに実施する
  • 再生型M&Aには状況により手法を選択できる、廃業を回避できるなどのメリットがある

「再生型M&Aとはどのような手法?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
再生型M&Aとは、債務超過や赤字などで事業継続が困難になったときに活用される手法です。

本コラムでは、再生型M&Aの概要やメリットについて説明します。
一般的なM&Aとの違いや具体的な手法、実施の流れもまとめました。また、再生型M&Aを成功させるためのポイントも紹介します。

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再生型M&Aとは

再生型M&Aとは、清算も視野に入れつつ、M&Aにより事業再生を目指すことです。
債務超過や経常損益が赤字の状態が続いているときなどに、再生支援をしてくれるスポンサー企業を探して、M&Aをすることによって活路を開きます。
経営状態が悪くとも、魅力のある企業であれば再生型M&Aができる可能性があります。

たとえば、独自の技術や特許権を有している企業や、特定の地域で高い知名度やシェアを誇る企業であれば、利益を生み出せると判断されてスポンサー企業がつくかもしれません。

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再生型M&Aと一般的なM&Aの違い

一般的なM&Aと再生型M&Aの主な違いとしては、次の4点が挙げられます。

  • 再生型M&Aには多大なコストがかかる
  • 再生型M&Aの相手企業を見つけるのは困難
  • 再生型M&Aには債権者が関わることが多い
  • 経営者にかかる負担が大きい

それぞれの違いについて解説します。

再生型M&Aには多大なコストがかかる

再生型M&Aには多大なコストがかかります。

再生型M&AではM&Aを実施しつつ事業の立て直しもするため、手間と時間がかかります。
M&Aの専門家であるM&A仲介会社に依頼する場合も、費用が高額になることが多いです。

通常のM&Aであれば成功報酬のみで請け負うM&A仲介会社であっても、難易度が高い再生型M&Aは成立しないことが多いため、成功報酬に加え、着手金や月額報酬などの支払いを求められる場合があります。

再生型M&Aの相手企業を見つけるのは困難

再生型M&Aは、一般的なM&Aよりも相手企業を見つけることが困難です。

再生型M&Aに踏み切る会社は業績不振に陥っている状態です。通常の会社と比べて経営リスクが高く、立て直しに失敗する可能性があります。マイナス面を上回るような魅力が会社にないと、「M&Aにかかるコストを支払ってでも再生をサポートしたい」と思ってもらえません。

一般的なM&Aよりも相手探しのハードルが高くなります。

再生型M&Aには債権者が関わることが多い

一般的なM&Aは売り手企業と買い手企業の交渉で進んでいきますが、再生型M&Aでは売り手企業と買い手企業に加え、売り手企業の債権者が関わることが多いです。
売り手企業と買い手企業が単に合意すればよいのではなく、債権者とも話し合わなければなりません。

債務の減額やスケジュールなども含めて交渉を進めていくため、一般的なM&Aよりも難航する傾向にあります。

経営者にかかる負担が大きい

一般的なM&Aと比べると、再生型M&Aは成立が困難です。少しでも成立の可能性を高めるために、経営者はときには可能なかぎりの犠牲を払うことを求められます。

たとえば、個人資産を債務返済に充当することや、社長を引退すること、他社の事業に組み込んで社名を消すことなどが求められることもあります。

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再生型M&Aを選択するケース

再生型M&Aは、次の状況下で選択することがあります。

  • 債務超過している
  • 経常損益が赤字である
  • 金融機関への返済が遅れている

いずれも、そのままの状況が続けば、早かれ遅かれ廃業は免れません。
また、何も対策をせず放っておくと債務や延滞利息がさらに増えて、よりいっそう厳しい状況になることも想定されます。

「清算をするか、事業を継続するか」と迷ったときは、早めに再生型M&Aの実績が豊富なM&A仲介会社などに相談しましょう。

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再生型M&Aの主な5つの手法

再生型M&Aには複数の手法があります。主な手法としては、次の5つが挙げられます。

  • 企業再生型
  • 事業譲渡型
  • 会社分割型
  • 吸収合併型
  • 第二会社型

各手法の特徴やメリット、懸念点などについて解説します。

企業再生型

企業再生型のM&Aとは、スポンサー企業の子会社として再生を目指す手法です。スポンサー企業から資金提供を受け、債務解消と成長を実現します。

企業再生型のM&Aでは、再生する企業は法人格を維持でき、なおかつ私的再生手続きとして進めることが可能です。

ただし、企業再生型のM&Aは中小企業にはあまり適していません。たとえば債務免除益に応じて課される税金は繰越欠損金と相殺できますが、企業規模が小さい場合には繰越欠損金も少なく、相殺のメリットを活かせないこともあります。

また、そもそもの事業規模が小さいときは企業再生に成功したとしても得られる利益が少ないと考えられます。再生までにかけた資金に見合わない可能性があるため、スポンサーになりたいと考える企業は現れにくいでしょう。

事業譲渡型

事業譲渡型のM&Aとは、スポンサー企業の一事業として再生を目指す手法です。破産した場合も実施可能であるため、中小企業の再生型M&Aのなかでも広く活用される手法です。

事業譲渡型M&Aでは、事業譲渡の対価を受け取れるため、債務弁済に充てることが可能です。
また、平等な弁済ができるため、債権者からも納得してもらいやすいです。

会社分割型

会社分割型のM&Aとは、採算がとれている事業は別会社に移転し、残った採算がとれていない事業の再建を目指す手法です。

しかし実際には不採算事業の立て直しは難しく、資産の売却後に会社を清算することがほとんどです。

会社分割型M&Aでは、早めに採算事業と不採算事業を切り離すことにより、採算事業を保護し、不採算事業がさらに悪化することを回避します。

採算事業の引き継ぎ先が新設会社の場合なら優良企業とみなされ、出資を受けやすくなるでしょう。企業再生を早期に実現できる点もメリットです。

会社分割型M&Aは事業が有する設備や従業員、権利などをすべて移転する包括承継であるため、再生型M&Aのなかでは手続きが簡単です。

許認可などの再取得や従業員の雇用契約なども不要なので、会社分割を実施してすぐに事業を開始できます。

吸収合併型

吸収合併型のM&Aとは、スポンサー企業と合併して、ひとつの法人格になるスキームです。再生型M&Aを目指す企業が消滅会社となり、スポンサー企業が存続会社となります。

吸収合併の前に会社分割をおこなって採算事業と不採算事業を切り離し、採算事業のみ存続会社に組み入れることが一般的です。

吸収合併を行うと企業規模が拡大するため、スケールメリットが期待できます。

第二会社型

第二会社型M&Aとは、親族や従業員などが代表を務める新設会社に採算事業を引き継ぐ手法です。

もともとの企業には不採算事業のみを残し、自社株式や使用していない資産などを現金化したのち、清算を実施します。
事業が継続するため、従業員やノウハウを守れます。

第二会社型M&Aは新しい会社として再生するため、債権者やスポンサー企業からの協力を得やすい傾向にあります。また、不採算事業を切り離すため、効率よく事業再建が進み、債権者に返済できる可能性も高まります。

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再生型M&Aを実施する3つのメリット

再生型M&Aの主なメリットとしては、次の3つが挙げられます。

  • スポンサー企業のサポートを受けられる
  • 状況に応じて手法を選択できる
  • 廃業を回避できることもある

各メリットについて解説します。

スポンサー企業のサポートを受けられる

費用面の負担が大きすぎるため、自力で立て直すことは実現不可能なことが多いです。
しかし、再生型M&Aではスポンサー企業のサポートを受けて実施するため、比較的スムーズに進みます。

多くのケースにおいて保有資産を現金化して債務返済に充当することは前提となりますが、それだけでは返済しきれない状態になっていることが多いため、スポンサー企業のサポートが受けられるのは大きなメリットだといえるでしょう。

状況に応じて手法を選択できる

再生型M&Aは、紹介したように多くの手法があります。

さまざまな状況や目的に合った方法を選ぶことが可能です。破産手続きをするほかないと諦めていた状況下でも打開策が見つかることがあります。

廃業を回避できることもある

選択した手法によっては、廃業を回避できます。廃業を回避できれば、譲渡事業に属する従業員やノウハウを守ることが可能です。

譲渡対象ではない事業は清算することになりますが、一部の事業が残ることで従業員や今まで築いてきたノウハウを存続できるのはメリットです。

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再生型M&Aの手順

再生型M&Aは、一般的に以下の手順で進めていきます。

  1. M&A仲介会社に相談する
  2. 手法の選択と再生計画の策定
  3. 金融機関と返済計画を練り直す
  4. スポンサー企業の選定
  5. 基本合意契約の締結
  6. デューデリジェンスの実施
  7. 再生型M&Aの最終契約の締結

再生を目指しつつ、M&Aも成功させる手法のため、再生型M&Aは通常のM&Aよりも工程が複雑になりがちです。

1.M&A仲介会社に相談する

再生型M&Aに着手するときは、再生型M&Aの実績があるM&A仲介会社に相談しましょう。
実績が豊富なM&A仲介会社ならば、適切なサポートを受けられます。

再生型M&Aは通常のM&Aよりも相手企業が見つかりにくい手法です。
相手企業は債務などの問題を抱えている部分にも着目して見定めるため、長期的に見てメリットの部分が非常に大きいと相手企業が判断しないかぎ限りは、マッチングは難しいでしょう。

M&A仲介会社は再生型M&Aの相手企業としてふさわしい企業のリストも有しているため、利用すれば相手企業が見つかりやすくなります。

2.手法の選択と再生計画の策定

M&A仲介会社に相談し、適切な手法を選択します。
採算事業と不採算事業を割り出し、決定したM&Aの手法を進めていくうえで、実現可能な計画を立てましょう。

作成した計画書は金融機関などの債権者やスポンサー候補企業に提出します。
具体性に乏しいときや債権者・スポンサー企業の負担が大きすぎるときは、協力を得られない可能性があるため、実現可能な計画書を作成しましょう。

「自社がどうしたいか」ではなく、「どのような計画なら相手企業の協力を得られるか」という点を重視して、計画を策定することが大切です。

3.金融機関と再生計画を練り直す

次に、再生計画を金融機関と話し合って調整します。

再生型M&Aを実施する状況では、返済が滞っている金融機関が複数あることや、買掛金の未払いなどの負債があることが想定されます。

そのような状況のなかで特定の金融機関への返済を優先すると、不公平が生じます。優先されなかった側の不満が募ると、今後のリスケジュールや再生型M&Aの実行において同意を得にくくなってしまいます。各金融機関や取引先の意向を確認しつつ、リスケジュールを進めていきましょう。
債権者との交渉が難しいときは、弁護士などの専門家のサポートを受けることも大切です。

また、再生型M&Aのトータルサポートを実施しているM&A仲介会社なら、リスケジュールや債権者との交渉もまとめて任せることができるので、スムーズなM&A成立を目指せます。

4.スポンサー企業の選定

実現可能な計画を立てたら、条件に合うスポンサー企業を選定します。
透明性が高い健全経営を実施しているスポンサー企業なら、再生型M&Aの成功も実現しやすくなるでしょう。

スポンサー企業に「少しでも自社をよく見せたい」という気持ちがはたらくと、あとでトラブルを招く恐れがあります。選定の時点で自社の現状を正直に伝えておきましょう。

5.基本合意契約の締結

スポンサー企業と交渉をおこない、合意に至った場合は基本合意契約を締結します。

なお、基本合意契約とは、再生型M&Aの実施を約束するものではありません。再生型M&Aに向けて、おおまかな条件を確認し、今後のスケジュールを確認するための契約書です。

基本合意契約の締結時には秘密保持契約も締結し、次の段階であるデューデリジェンスを実施する際に、知り得た相手企業や関連企業などの秘密を漏洩しないことも約束します。

なお、基本合意契約書には独占交渉権の項目が盛り込まれることが一般的です。基本合意契約の締結後、ほかのスポンサー候補企業との交渉は並行して実施できません。

6.デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、再生対象となる会社の価値や想定されるリスク、簿外債務などについて詳しく調べる調査のことです。
再生型M&Aにおいては通常のM&Aよりも高いリスクを負うと考えられるため、より慎重に実施されます。

デューデリジェンスの結果、リスクが高すぎると判断されたときは、再生型M&Aは破談になるでしょう。ほかのスポンサー候補企業を探して一から交渉するか、会社解散・清算の方法を選択するかのいずれかの決断が必要です。

7.再生型M&Aの最終契約の締結

デューデリジェンスで問題がないと判断されたときは、再生型M&Aを実施するための契約を締結します。

なお、M&Aの手法によって契約書の名称は「事業譲渡契約書」や「会社分割契約書」などと異なります。手法に合わせた書類を用意しましょう。

デューデリジェンス後に締結するこれらの契約書は、基本合意契約とは異なり、再生型M&Aを実施するための法的拘束力を持つ契約書です。

どちらかにとって一方的に不利・有利となる条項が含まれていないか、実現可能かなど、細部まで確認してから契約に同意をしましょう。

また、想定されるリスクが網羅されていることや、リスクに対する保証が取り決められていることなども確認が必要です。

しかしながら、将来に起こりうる可能性をすべて網羅した契約書を作成するのは簡単ではありません。契約書を作成する際は、専門家の助けを借りることがおすすめです。

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再生型M&Aを成功させる3つのポイント

再生型M&Aは、通常のM&Aと比べて成功する可能性が低いM&Aです。また、スポンサー企業を見つけるのも難しく、候補企業が現れても、交渉やデューデリジェンスの段階で話が流れてしまう可能性もあります。

少しでも成功する確率を高めるために、次の3つのことを実施してください。

  • プロジェクトチームを組む
  • 金融機関と交渉しておく
  • 専門家のサポートを受ける

各ポイントについて説明します。

プロジェクトチームを組む

再生型M&Aは、M&Aを実行しつつ事業再生も目指す手法です。

そのため、一般的なM&Aと比べて調査や手続きなどに時間がかかり、業務が煩雑になります。あまりにもM&A実行までに時間がかかると、負債が現状以上に増えるかもしれません。
必要以上に長引かせないためにも、プロジェクトチームを組んで対応することが必要です。

負債を抱えた企業の税務に詳しい税理士や、債権者や金融機関との交渉に慣れた弁護士などの専門家も含むプロジェクトチームを組めば、複雑かつ煩雑な再生型M&Aもスムーズに進めやすくなります。

しかし、各業務に適した専門家を見つけるのは時間がかかります。プロジェクトチームを組むことが難しい場合は、再生型M&Aの経験を有するM&A仲介会社に相談しましょう。

金融機関と交渉しておく

再生型M&Aを必要とする売り手企業は、複数の金融機関から融資を受けていることがあります。関わる金融機関の数が多くなれば、合意形成が難しくなり、再生型M&Aも難航します。

M&Aの交渉を進める前に、個々の金融機関と交渉して、返済負担を軽減できないか相談しておくことが大切です。

専門家のサポートを受ける

税務なら税理士、会計なら公認会計士などの専門家に対応してもらうことで、スムーズに再生型M&Aを実現できます。ただし、専門家であっても再生型M&Aに慣れていない場合は、スムーズな対応を期待できません。

M&Aを専門的に支援する仲介会社であれば、トータルサポートを受けられる可能性があります。

再生型M&Aの実績のあるM&A仲介会社に相談し、再生型M&Aの業務に長けた専門家のサポートを依頼しましょう。

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まとめ

再生型M&Aは売り手企業と買い手企業だけでなく債権者も交渉に参加するため、通常のM&Aよりハードルが高くなります。しかし、スポンサー企業が見つかれば、廃業を免れたり従業員・ノウハウを守れたりできます。

再生型M&Aを成功させるには、プロジェクトチームを組むことや金融機関との交渉が大切です。また、専門家のサポートを受けることもおすすめです。専門家に相談することで、より良い解決策が見つかることもあるでしょう。