持株会社の設立とは?手順や種類やメリット・デメリットを徹底解説!

2023年9月19日

持株会社の設立とは?手順や種類やメリット・デメリットを徹底解説!

このページのまとめ

  • 持株会社は、他の企業の株式の所有を通じ、その企業の経営を支配することを目的とする会社
  • 効率的な経営などのメリットがあるが、子会社の統制が難しいなどのデメリットもある
  • 手続上の注意点もあるため、持株会社による経営統合は総合的な判断の上で実施すべき

「持株会社」「ホールディングカンパニー」という用語について、ニュースや新聞で見かけるものの、詳細な意味まではわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、正しい理解と知識を深めたいと思っている方向けに、知っておきたい持株会社の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。持株会社の設立による経営統合を通してM&Aに関わる方は是非参考にしてください。

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持株会社とは

持株会社はホールディングカンパニーとも呼ばれます。他の企業の多くの株式を所有し、株式を通じてその企業の経営を支配することを目的とする会社のことです。

持株会社の種類

持株会社には純粋持株会社と事業持株会社、金融持株会社の3つの種類があります。

純粋持株会社

純粋持株会社は、自身は主要な事業を持たず、他の会社の株式を所有することによって、それらの会社の経営を支配することを目的とした持株会社です。

事業持株会社

事業持株会社は、他の会社の経営を支配するだけでなく、自身も相当な規模で事業を行っている持株会社です。

金融持株会社

金融持株会社は、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関の株式を所有し、それによって各子会社の経営を支配する会社のことです。販売や製造などの具体的な事業活動を直接行わない点は純粋持株会社と同じですが、金融持株会社には子会社の大部分が金融機関であるという特徴があります。

合併との違い

持株会社の設立は経営統合の手法の1つです。他の経営統合の手法として、M&Aにおける合併がありますが、合併は複数の企業を一つにするのに対し、持株会社化では各企業が独立して存在するまま経営が統合される点で異なります。
経営統合の場合、各企業は子会社としてそのまま継続して存在し、内部の規定や手続きは基本的に変更されません。

事業部制とカンパニー制

合併だけでなく、事業部制やカンパニー制もしばしば持株会社の設立による経営統合と混同されがちです。それぞれの定義を確認しましょう。

事業部制とは

事業部制は、日本だけでなく、世界中で広く使われている組織形態の一つです。

この制度は、事業に関する意思決定の権限や責任を本社部門から各事業部に移し、迅速かつ適切な判断を行うための組織形態と言えます。複数の事業を展開している企業は事業部制を採用していることが一般的です。

各事業部は、事業推進に必要な機能を保有しており、営業、生産、購買などの事業運営に必要な機能が事業部ごとに組織されています。
そのため、本社部門との大掛かりなコミュニケーションは基本的に不要であり、事業部のみで迅速に事業を進めることができます。ただし、人事や経理といった機能は組織全体で共有されることが一般的です。

ただし、持株会社制はそれぞれの法人が別法人であるのに対して、事業部制は各事業部別法人のように扱ってはいるものの同一法人であるため、会社内部に問題が生じた場合などは、全社単位でリスクが波及する可能性があることに注意が必要です。

カンパニー制とは

カンパニー制は、各事業部門が独立採算制を採用する組織形態です。各事業部門は法的には独立していませんが、実質分社化しているような状態で、人事から資金調達までのより広い権限を持っています。

事業部制とカンパニー制の主な違い

事業部制とカンパニー制の主な違いは、裁量の範囲にあります。事業部制では主に業績管理が事業部ごとに単独で行われるのに対し、カンパニー制では人事から資金調達までのより広い権限が事業部に委譲されることが一般的です。

持株会社制とカンパニー制の主な違い

そして持株会社制とカンパニー制との違いは、カンパニー制は1つの会社内で独立した収支管理が行われますが、持株会社制はそれぞれの会社は別法人であるという点です。

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持株会社を設立する目的

持株会社を設立する目的は複数考えられ、企業によって異なります。
主な目的について解説します。

投資ではなく支配

持株会社は、他社の株式を所有することで事業活動を支配し、利益を得るために存在します。これはベンチャーキャピタルなどが投資のために他社の株式を所有する目的とは異なります。

企業再編

持株会社を設立することで、企業の再編や統制のとれたグループ化を進めることができます。

企業の子会社化

企業を子会社化することで、支配力を強化したり、他の企業からの敵対的な買収から身を守ったりすることができます。また、事業の承継のための子会社化も目的として考えられます。

また、設立された持株会社は他の子会社を自社の支配下に置くことで、グループ全体の収益性を高められる可能性があります。

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持株会社の増加の背景

日本ではもともと、持株会社は1947年に制定された独占禁止法で禁止されていました。しかし、企業活動のグローバル化や、日本の産業の空洞化といった課題に対する懸念から、経済界を中心に規制緩和を進めるべきとの主張がなされました。その結果、1997年6月の法改正により、持株会社設立が解禁されました。

少し古いデータとなりますが、独立行政法人経済産業研究所の開示データ「どのような企業が持株会社を選択しているのか?」によると、持株会社の解禁以降、持株会社は増加し続けています。理由として企業再編が挙げられます。

各企業は、親会社に資源配分の役割を集中させることで、グループ全体の経営効率を向上させることを目指しています。そのため、持株会社設立という選択肢を選ぶ企業が増えているのです。

※参照元:独立行政法人経済産業研究所「どのような企業が持株会社を選択しているのか?

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持株会社を設立するメリット

この章では、持株会社を立ち上げることによるメリットについて説明します。

子会社から経営機能を分離することによる経営効率の向上

持株会社を設立するメリットは、親会社である持株会社がグループ全体の指揮をとることで、グループ会社が事業に専念できる点です。グループに属さない会社では経営と事業運営の両方を行う必要がありますが、グループ会社の場合、経営機能を持株会社に集約することができます。その結果、子会社は事業運営に専念することができ、各子会社の専門性が高まり、グループ全体の成長につながります。

新規事業のスムーズな立ち上げと損失の分散

持株会社は複数の企業を傘下に持つため、新たな事業に参入しやすくなります。また、異なる業種の子会社を持つことで、業績の変動リスクを分散できます。一つの事業で大きな損失を出した場合や新規事業が失敗した場合でも、グループ全体での深刻な業績不振に繋がるような事態は避けられる場合が多いでしょう。

経営資源やノウハウの共有が可能

持株会社化による経営統合によって、同じ親会社の下にある子会社は「グループ会社」となります。それぞれが独立した法人ですが、持株会社を通じて経営資源や経営戦略を共有できるのが利点です。

節税効果がある

相続税の節税効果がある点も持株会社の利点の1つです。

相続税とは、個人が他の人から相続によって財産を受け取った場合に課される税金です。事業承継として会社の経営を引き継いだ場合を考えてみましょう。企業の業績が良ければ、後継者の相続税負担も大きくなります。

持株会社に自社の株式を移転させ、後継者には持株会社を引き継いでもらうことで、もとの自社の利益は子会社の利益となり、相続税ではなく法人税の対象となります。これにより、節税効果が生まれます。

ただし、持株会社の設立による節税策は税務署で認められない場合もあるため、注意が必要です。

各事業に適した人事制度を導入できる

持株会社化による経営統合では、会社ごとに人事制度や労働条件を設定できることが特徴です。合併による会社の統合では、人事やシステムの違いから統合に時間と手間がかかります。しかし、持株会社による経営統合の場合、各会社が独立したままであるため、人事やシステムの統合は必要ありません。合併による統合よりも従業員にとって働きやすい環境を提供でき、労働生産性の向上につながりえます。

効率的な経営統合が期待できる

持株会社化による経営統合を実施すると、合併などと比較してM&Aがスムーズになると言えます。傘下の子会社を売却したい場合は、その1社を切り離すだけであり、グループ全体に影響はありません。対象会社を買収する場合は、持株会社の子会社として受け入れる形となります。

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持株会社を設立するデメリット

この章では、持株会社を設立する際のデメリットを説明します。

子会社の統制は簡単ではない

持株会社を設立することで、グループとしてのリスク分散ができる一方で、子会社は独立した会社であるため、合併などと比較すると全体の統制が簡単でないことはデメリットであると言えます。

例えばグループ企業間での関係の悪化や、不都合な事実の隠蔽がなされると、グループ全体に損害を及ぼす可能性があります。そのため、重要な決定に関しては、子会社単独では決定できず、親会社に承認を求める必要が生じる場面が増えるでしょう。意思決定が遅れることで、経営が滞るリスクがあるため、これを避けるためにも普段から円滑な連携を心がけましょう。

会社維持コストの増加

持株会社の場合、経営は親会社に集約されますが、各子会社は基本的に総務や人事などのバックオフィス部門を必要とします。グループ拡大を目指す場合、事務部門の拡大は不可欠であり、それに伴いコストも増加します。

バックオフィス部門が統一される合併に比べ、各子会社ごとにバックオフィス業務のコストが発生するため、並行してバックオフィス業務のコスト削減が重要なポイントとなります。

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持株会社を設立する方法

この章では、持株会社の設立方法について説明します。持株会社の設立には主に3つの方法があります。それぞれの方法を紹介します。

株式移転方式

株式移転方式は、既存の会社(B社)が新しい親会社を持株会社(A社)として設立し、A社に子会社となるB社の全株式を移転する方法です。複数の会社が共同で株式を移転する場合は、「共同株式移転」と呼ばれます。

この方法では、既存会社(B社)の株主が持株会社(A社)の株主になるという特徴があり、同じグループ会社における経営統合でも用いられますが、特に異なるグループ会社同士を経営統合する際によく使われます。子会社は持株会社の下に並列的に存在するだけであり、親会社から、あるいは子会社間での事業の許認可や財産の移転は行われません。

株式移転方式のメリットは、許認可の移転手続きが不要であり、事業への影響が最小限に抑えられること、新規の借入れをせずに実施することも可能であること、既存の会社が存続するため取引先や従業員への影響が少ないことなどです。

株式交換方式

株式交換方式では、既存の会社(A社)が親会社(持株会社)となります。通常、親会社(A社)の一部の株式と子会社(B社)の全株式を交換することで、完全な支配関係を築きます。

この方法は、既に法人化されている親会社が子会社を追加したい場合によく使われます。通常のM&Aでは現金が対価として支払われますが、株式交換では親会社の新株や既存株が割り当てられることが一般的です(その他の資産を割り当てることも可能ですが、税務上の観点から注意が必要です)。

抜け殻方式

抜け殻方式は、既存の事業会社(A社)の事業を別の会社(B社)に移し、A社自体がホールディングカンパニー(持株会社/親会社)となる方法です。この方式には主に会社分割が使われます。

新設分割では、株式会社などが持つ事業に関連する権利や義務を、新たに設立される会社が引き継ぐようにします。新設のB社が子会社として、A社から分割された事業の権利や義務を引き継ぐ形となります。

会社分割によって分割される会社(A社)が、権利や義務を引き継ぐ子会社(B社)の株式を取得することで、親会社と子会社の資本的な結びつきが生まれ、関係が構築されます。

抜け殻方式のメリットは、現金の調達が不要であること、既存の会社で手続きが行われるため株主にとっての手続きが簡略化されることです。

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持株会社の設立による経営統合の注意点

この章では、持株会社の設立による経営統合に関する注意点をまとめます。

グループ全体で方向性を共有する

持株会社を設立してホールディングス化すると、子会社は独立したまま保たれます。子会社同士は兄弟関係になりますが、独立しているためにつながりはそれほど密接ではありません。

グループ化で期待されるメリットの一つに子会社間の協力・連携があります。しかし、協力関係を築くことができていない場合、連携が円滑に進まない可能性があります。
そのため、普段から企業グループ全体において理念・方向性を共有することが大切です。

また、子会社は自主性が強く、親会社の方針に従わない場合もあります。グループ全体の統一が乱れる可能性がありますので、親会社がリーダーシップを発揮し、明確な方向性を示すようにしましょう。

管理コストの見直しを行う

経営管理では、管理コストの見直しが重要です。ホールディングス化によって多くの子会社を傘下に持つと、法人を管理するコストが高くなるためです。

子会社は独立した法人なので、経理、人事、総務などのバックオフィス業務は、基本的に会社ごとに必要です。本来一つで済むはずのバックオフィス業務が複数重複すると、コストが大幅に増加します。

持株会社を設立するには、会社設立のための登記費用・アドバイザリー費用・管理部門の人件費などの初期費用も考慮して進めましょう。

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持株会社の設立による経営統合の手続き上の注意点

持株会社の設立には、手続き上、また対外的にもさまざまな範囲の注意点があります。重要なポイントについて説明します。

株主総会の関与が必要

持株会社設立における経営統合では、株主総会の関与が必要であることに注意しましょう。基本的に株主総会での決議が必要となるためです。計画を立てて円滑に進めるために、予め株主総会に関する手続きを把握しておきましょう。

雇用条件や社会保険の手続の実施

会社設立に関連する事項以外にも、従業員の雇用条件や社会保険などの手続きも忘れないよう注意してください。持株会社の従業員は、既存の会社から移籍すると見なされるため、会社分割を伴わない場合でも関連する手続きが必要です。持株会社設立による経営統合では、定款や資本金以外にも経営に関わるさまざまな要素を考慮する必要があります。

債権者への説明

債権者に対しても、持株会社設立による経営統合の詳しい説明が必要な点には注意が必要です。基本的に債権者保護手続きが必要になるため、事前に目的や手続き、資本金や定款などの内容を説明しておくと良いでしょう。

特定の会計基準・税法の遵守

持株会社設立時には、難解とされている企業結合に関連する会計基準や事業分離に関する基準などを遵守する必要があるため注意が必要です。運用においては、連結決算への対応策や、特定の税制に合わせた対応(例:グループ法人税制やグループ通算制度)への準備も忘れずに行いましょう。

法的手続の漏れのない実施

法的手続きに関しては、効力が発生する日から逆算して計画を立て、必要な書類の整備や手続きを漏れなく行わなければならないことには注意が必要です。組織再編の手法はさまざまですが、手続きの完了タイミングは手法によって異なるため、専門家や経験豊富なスタッフの支援を受けながら、手続きが発生する時期や内容を詳細に計画しましょう。

開示手続きの実施

上場企業が持株会社設立による経営統合を行う場合、適時開示や上場手続きが必要となることに注意して下さい。通常の会社設立手続きとは異なり、事務手続きが複雑であることに留意しましょう。資本金や定款の設定と同様に、専門家の助言を得ながら進めるべきだと言えます。

開業届の提出

新たな会社を設立する場合は、資本金や定款に加えて、開業届の提出を実施しなければならないことには注意が必要です。設立後3カ月以内に提出しましょう。すでに起業している方であれば、資本金や定款については理解されているかと思います。

持株会社設立による経営統合には、資本金や定款以外にも多くの手続きが必要です。やはり自社だけで進めるのではなく、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

許認可の引き継ぎの確認

抜け殻方式を採用する場合、許認可にも注意しましょう。許認可が承継されない可能性があることには注意が必要です。計画通りに経営統合が進まない可能性がありますので、しっかりと確認しておくことが重要です。

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まとめ

近年、日本でも持株会社が増加しています。持株会社は親会社が複数の子会社を統括するグループを形成することで、効率的な経営を目標とするものです。

子会社を効果的に統括できない場合や、グループの統制が乱れるなどのデメリットも想定されますが、持株会社によって、従来よりも効率的な経営が実現する可能性があります。実施するかどうかについて総合的な判断が必要とされます。

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