会社の身売りとは?メリットやデメリット、経営者・社員への影響を解説
2024年2月19日
このページのまとめ
- 会社の身売りの印象は良くなっており、成功事例も増えている
- 会社を身売りすることにより、後継者が不在でも事業承継ができる
- 会社を身売りの際、事前連絡を怠ると、社員や取引先に迷惑をかける可能性がある
- 会社の業績が良い時期に、買い手を探すことで身売りの成功率が上がる
- 会社の身売りについて悩む場合は、専門家への依頼がおすすめ
「会社の身売りの後、自分や社員の生活はどうなるのだろう」と不安を覚える経営者もいることでしょう。会社を身売りすると、事業を残せるなどのメリットを得られますが、場合によっては社員や取引先に迷惑をかけるなどのデメリットもあるため、慎重な判断が必要です。
本記事では、会社の身売りの概要や身売りすることによるメリットやデメリット、身売りを成功に導くポイント、身売りの基本手順などを紹介しますので参考にしてください。
目次
会社の身売り(売却)とは
会社の身売り(売却)とは、M&Aの一種であり、親族や自社の社員などに事業を承継できなかった場合に、会社の事業や営業権を第三者に売却することを指します。
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称で、直訳すると「合併と買収」を表します。
中小企業庁の「2021年版 中小企業白書」によると、M&Aはいまや年間約4,000件実施されているほど活発化しています。
以前は会社が身売りをするケースが少なく、身売り自体の印象もよくありませんでした。しかし、社会情勢が変化し続ける現代においては、身売りに対する世間の印象は大きく変わりつつあります。その理由として、M&A成功例が増加したことや、売却を前提にしたベンチャー企業が登場したことが挙げられます。
参考:中小企業庁「2021年版「中小企業白書」 第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用」
会社を身売り(売却)する7つのメリット
会社を身売りすることで、事業の存続や社員の雇用保障など、さまざまなメリットが生まれます。ここでは、会社の身売りにおけるメリットを7つご紹介します。
1.事業承継ができる
身売りをすると、会社の事業を承継することが可能です。
経営者の親族や社員に事業を継承する人材が居ない場合、以下のような資産がそこで途絶えてしまう可能性があります。
- 事業の発展・継続に関わってきた社員や取引先
- これまでに獲得してきた資産
- 事業に生かしてきた知識・技術
しかし、事業承継を行うことができれば、これらが途絶えることを阻止することが可能です。
事業承継には、会社で行っている事業をそのまま承継するだけでなく、人材や資産、知識・技術の承継も含まれています。経営者が変わってからも安定した状態で、それまでと同様に事業を継続できます。
2.社員を守れる
会社の身売りは、社員を守る手段にもなります。前述したように、事業承継には社員の引き継ぎも含まれています。
後継者が見つからない場合、会社は経営者の引退と同時に廃業せざるを得ません。会社が廃業すれば社員の雇用は守れず、社員は新たな職を見つけなければならなくなってしまいます。
身売りが実現できれば、会社が存続できるため、社員も職を失うことがなくそのまま会社への勤務を継続することが可能です。
3.個人保証や債務から解放される
経営者は、会社を身売りすることにより個人保証や債務から解放されます。個人保証とは、会社が金融機関から融資を受ける際に設定されるものです。会社の支払い能力を補完するものとして、また、支払いの責任を明確にするために経営者個人に設けられます。
経営者が経営を行う限り、個人保証や債務から逃れることはできません。しかし会社を身売りすれば、買い手が債務を引き継ぎ経営者も変わるため、このような重い責任から解放されます。
4.廃業費用がかからない
会社の身売りでは、廃業費用がかからないこともメリットの1つです。通常、身売りをする場合、会社が所有する在庫や設備、建物などはそのまま買い手に引き継いでもらえます。
身売りをせず廃業すると、廃業のための登記や公告だけでも8万円程度かかります。さらに清算手続きを専門家に依頼すれば、数十万円ほどの費用がかかることも珍しくありません。
また、特殊な機材や古い在庫品などの処分は難しく、買い取ってもらえない可能性もあります。事務所が賃貸物件であれば、現状回復にも追加で費用がかかるでしょう。会社を身売りすれば、このような負担を負わずにすみます。
5.売却による利益を得られる
売却によって利益を得られる点も、会社を身売りするメリットといえます。会社の業績が好調であれば、それに応じた高値で売却することが可能です。
また、会社が持つ知識や技術、特殊な機材、社員の経験やスキル、、取引先なども売却価額に大きく影響します。他社との差別化や事業の成長が期待できる要素が多ければ多いほど、より高額な売却益を得られる可能性が高まります。
売却で得た利益は、新規事業の資金に運用したり引退した後の生活資金に充てたりと、自由に使うことが可能です。
6.事業の拡大が期待できる
会社を身売りすることにより、事業拡大を期待できます。身売りにより経営者が変われば、これまでの経営方針は刷新されます。経営資源や人材などの環境が大きく変わり、これまで困難だったことにもチャレンジできるようになるでしょう。
また大手企業の傘下に入ることになれば、財務状況は格段に安定し、多角的に事業を拡大できたり成長スピート加速できたりとさまざまなメリットを得られやすくなります。
7.経営者が早期にリタイアできる
会社を身売りする場合、経営者が早期リタイアできる点もメリットです。早期にリタイアできれば、自分に費やせる時間が多くなり、やりたいことに専念できます。
経営者として日々の業務に追われていると、やりたいことや新たな挑戦に取り組む時間の確保は困難です。会社の身売りによって早期リタイアすれば、自由に使える時間が増え、やりたいことや新たな挑戦に取り組めるようになります。
会社を身売り(売却)する5つのデメリット
会社を身売りすることによる主なデメリットは、次の5つです。
- ロックアップの恐れがある
- 債務が残る場合がある
- 競業避止義務が発生する
- 社員や取引先に迷惑がかかる
- 他人から非難される
これらの会社の身売りによるデメリットを詳しく解説します。
1.ロックアップの恐れがある
会社の身売りによるデメリットの1つは、ロックアップが生じる可能性があることです。会社の売却時に、買い手とロックアップ契約を結んだ場合、経営者が会社に残る義務や責任が発生します。
ロックアップとは、会社売却後も経営者は会社に残り、決められた一定期間働き続けなければならないとする条項です。ロックアップは、スムーズな事業の引き継ぎのために設けられます。一般的に、2〜3年ほどの期間が設定されます。
2.債務が残る場合がある
身売りの状況によっては、債務が残る場合もあります。先ほど「債務は買い手のものになる」と解説しましたが、次の2つのケースでは債務が残る可能性が高いといえます。
1つ目は、会社の負債が大きすぎる、または慢性的な赤字体質であった場合です。個人保証や連帯保証の解消が買い手に受け入れられず、負債が残る可能性が高いでしょう。
2つ目は、一部事業の売却にとどまった場合です。企業の身売り方法には、株式譲渡によるすべての売却と、事業譲渡による一部事業の売却があります。一部事業の売却にとどまった場合は、会社や経営者はそのまま存続するため、売却した事業以外の債務が残ることとなります。
3.競業避止義務が発生する
身売りによるデメリットは、競業避止義務が発生する場合があることです。競業避止義務とは、売却した会社と競合するような事業を行ってはならないとする条項です。
買い手との契約には、多くの場合で競業避止義務が含まれます。事業譲渡の場合は、会社法第21条が適用されるため、売却した日から20年間は同一市町村と隣接する市町村において同業種の事業を展開することはできません。
競業避止義務が発生すると、会社の売却後は同業種での事業展開が困難になることを理解しておきましょう。
4.社員や取引先に迷惑がかかる
会社を身売りすると、社員や取引先に迷惑がかかる可能性がある点もデメリットの一つです。通常、会社を身売りしても、雇用条件や取引先との契約は変わらないのが一般的です。しかしながら、経営状況が悪化すると、給与が下がったり待遇が悪くなったりするケースもあります。
また事業譲渡の場合は、譲渡先でリストラが実施される恐れもあります。リストラを行わない場合でも、減給や労働時間などの待遇変更で社員のモチベーションが下がり、結果的に退職に至る場合もあるでしょう。
身売りにより経営者が変われば、大幅な経営方針の変更により社員や取引先に何らかの悪影響を与える可能性も生じます。
5.他人から非難される
伝統のある会社が身売りを行い、業績が悪化したり仕事の質が低下したりした場合、他人からの非難を浴びる可能性があります。
知名度のある会社の場合は、退職した人を含む社員や取引先、さらには世間一般からも非難される恐れもあるでしょう。
会社の身売り(売却)による経営者・社員への影響
会社の身売りは、経営者や社員に多大な影響を与えます。ここでは、身売りによる経営者と社員の影響をそれぞれ解説します。
買い手との交渉次第で経営者の処遇が決まる
会社を身売りした経営者の処遇は、買い手との交渉次第となります。
前述の通り、ロックアップによって会社に残る義務が発生するケースや、売却した企業を買い手が子会社化する場合、経営者として残るケースもあります。また経営者が引退しても、顧問として事業に携わり続ける可能性もあります。
一方で、何らかの形で事業への寄与を望んでいても、交渉が成立しなければ、その望みを叶えることは困難です。買い手に希望を伝えて、可能な限り理想に近づけるように交渉を進める必要があります。
社員の雇用は継続される
会社を身売りした後、社員の待遇が変更されないように、詳細な契約を結ぶケースが一般的です。
身売りをすることで、待遇がより良くなる可能性もあります。買い手企業の規模は売り手より大きい場合が多く、売却前より高い給与水準が反映されるためです。
一方、経営者が変わることによる経営方針や評価基準の変化に伴い、社員の評価が下がってしまい、待遇が悪くなる恐れもあります。社員を守るためにも、売却時の契約内容を綿密に確認して、社員にとってより良い条件を交渉することが重要です。
会社の身売り(売却)を行う際の注意点
会社を身売りする場合は、次の3点をおさえておくことが大切です。
- 社員が流出しないようにする
- 待遇や給与などをしっかりと取り決める
- 情報が漏洩しないようにする
1つずつ詳しく解説します。
1.社員が流出しないようにする
会社を身売りする場合は、社員が流出しないように配慮しなければなりません。身売りする場合、社員は無形資産として企業価値に含まれます。特に、特殊な技術を持つ社員やキーパーソンであればなおさらです。
身売りする場合、社員は雇用条件などが変更されるのではと不安になります。そのため経営者は、社員の気持ちに配慮しつつ丁寧な説明を行い、理解を得る努力が必要です。
クロージングまでに社員の流出が見られると、クロージングの前提条件を満たせずに身売りができなくなる可能性もあるため注意しましょう。
2.待遇や給与などをしっかりと取り決める
会社を身売りする場合は、会社に残る社員の待遇や給与などをしっかりと取り決めることが重要です。契約を締結する際に、社員の雇用や条件を担保する内容をきちんと盛り込みましょう。
特に事業譲渡の場合は、待遇が悪化する場合もあるため、しっかりと契約書を交わすことが大切です。これまで会社のために働いてきた社員に報いるために、経営者は最後まで責任を果たす必要があります。
3.情報が漏洩しないようにする
会社を身売りする場合、情報漏洩には細心の注意が必要です。情報漏洩は、社員の流出につながったり、上場企業であれば株価変動の要因になったりします。
このような事態が生じると正常な交渉も難しくなるため、情報の扱いには細心の注意を払いましょう。
会社の身売り(売却)を成功に導く6つのポイント
続いて、会社の身売りを成功に導くポイントを6つご紹介します。
1.身売り(売却)の目的に優先順位を決める
会社の身売りの目的を明確にして、優先順位を決めましょう。目的の優先順位を決めておくことで、条件の設定や交渉がしやすくなります。
例えば、交渉できそうな買い手が見つからない場合、優先順位が低い項目から、売却条件を見直すことがおすすめです。優先順位の高い項目を明確にすることで、買い手に希望する条件を伝えやすくなり、売却に成功する可能性が高まります。
2.業績が良い時期に身売りする
業績が良い時期に会社の身売りをすると、売却価額が高くなることが期待できます。会社の業績は、売却価額に大きな影響を与える要素の1つです。
そのため、業績が良い時期に身売りすると、売り手にとって有利な条件で交渉がしやすくなり、より高い価額で売却できる可能性が高まります。
3.会社の強みを把握する
売却に適した買い手を見つけて交渉を円滑に進めるために、自社が持つ強みを把握することが大切です。自社の強みは、買い手との交渉で積極的にアピールできる要素の1つです。
自社の強みにメリットを感じる買い手の方が、自社との相性が良く、売却後の経営もうまくいきやすいといえます。自社の強みを明確化してまとめておくと、面談のときに交渉を進めやすくなります。
4.買収先は慎重に選ぶ
会社を身売りする際は、買収先を慎重に選択することが大切です。売却する会社によって、会社の将来や社員、取引先にも影響を与えるためです。
経営方針や価値観などがマッチしていれば、社員や取引先にポジティブな影響を与えられるでしょう。また、売却後の経営も安定しやすくなります。
5.社員に買収を前向きにとらえてもらう
企業を身売りする際は、社員に対して丁寧に説明して、買収を前向きにとらえてもらえるように働きかけましょう。
会社の買収は、経営方針の変化や待遇の変化など、社員が不安を抱えやすいものです。買収後の働き方や将来への漠然とした不安によって、退職してしまったり、モチベーションを低下させてしまったりする可能性があります。
売却内容を丁寧に説明して、理解を得られるよう尽力しましょう。買収先の経営者からも説明があれば、社員の不安を払拭しやすいといえます。
6.M&Aアドバイザーに相談する
会社を身売りする際は、M&Aアドバイザーに相談することがおすすめです。
M&Aアドバイザーは、身売りに関する知識や経験が豊富に備わっているため、M&Aのプロセスにおいて適切なアドバイスを受けることが可能です。身売りの検討段階から相談すると、本格的な準備や手続きもスムーズに進めやすくなります。
会社を身売り(売却)する基本手順
ここからは、会社を身売りする際の基本手順について解説します。
1.売却方法と戦略を決める
会社の売却方法には、大きく分けて株式譲渡と事業譲渡の2通りの方法があります。
株式譲渡は、文字通り株式を買い手に譲渡して会社の所有権を移す方法です。株式譲渡による会社売却のメリットは、手続きが容易な点です。また経営者個人が会社の株式を所有していれば、会社の売却で得た利益のすべては経営者に入ります。
一方、負債やトラブルなどマイナスな要素を多く抱えている会社の売却では、買い手が見つかりにくいといったデメリットがあります。
事業譲渡は、会社が行っている事業の一部を売却する方法です。株式譲渡に比べて、買い手が見つかりやすい点はメリットといえるでしょう。
ただし、売却した事業以外は会社に残ります。引退を目的とした会社の売却の場合、会社の廃業手続きが必要になるため、手続きの手間・費用がかかるといったデメリットがあります。
2.売却に関わる業者の選定と契約をする
会社の身売りでは、自社だけで買い手を見つけたり交渉したりすることは難しいため、業者を活用して売却の手続きを進めます。売却に関わる主な業者は、M&A仲介業者や金融機関、税理・会計・法律事務所の3つが挙げられます。
M&A仲介業者は、買い手探しから契約手続きまでをサポートします。売り手と買い手の希望条件をもとに買い手を探してもらえます。交渉時は中立な立場で交渉をサポートするため、スムーズに交渉を進められるメリットがあります。
妥協点を探る交渉をすることもあるので、絶対に譲れない点はあらかじめ決めておきましょう。
金融機関でも、M&Aの相談を受け付けています。営業エリア内の企業情報が豊富で、エリア内におけるマッチング力の高さが特徴です。
ただし、エリア内で買い手が見つからなければ、売却を保留されたり、M&A仲介業者を紹介されたりするケースもあります。
税理・会計・法律事務所は、身近な存在で相談しやすい業者です。M&Aに関する資料の収集や株価の算定などをしてもらえます。
しかし、M&Aの専門知識が豊富ではない可能性もあるため注意が必要です。M&Aを支援した実績があるかどうかを確認しましょう。また、相談や情報収集を行ったあと、提携している専門会社を紹介されるケースもあります。
3.売却の準備をする
会社の身売りに向けての準備は、主に次の3つです。
1つ目は、売却スケジュールの作成です。
経営者自身が譲渡に踏み切れず、時間が経過してしまうケースは思いのほか多くあります。
スケジュールを作成すると、計画性をもって行動できるようになります。
2つ目は、良好な経営状態・成長が見込める実績を作るための業績の調整・整理です。
業績と将来性が良好であれば、会社はより高い評価を受けます。実績を整理して、将来に向けた中期の計画や目標を具体化させて、成長が望める経営状態を整えることが重要です。
3つ目は、不正と見なされる可能性がある取引を整理することです。
法令や税務に対して問題のある取引が見つかった場合は、会社の売却は困難になってしまいます。問題を早めに解決するとともに、取引先や取引内容を明確にして透明性を確保しましょう。
4.提案文書を作成する
提案文書とは、会社について知ってもらい、買収するメリットを伝えるための資料です。
売却手続きの進め方や条件など、買い手に売却提案をするために作成します。具体的には、財務情報や取引先、事業内容など会社の現状が分かる詳細な情報や、売却目的や期待できるシナジー効果、M&A後の展望などを記載します。
提案文書の作成については、契約した専門業者に相談しながら、売却額や条件、進め方などを詳細に決めることが大切です。
5.売却条件と買い手をリストアップする
希望する売却条件とマッチする買い手のリストアップを行いましょう。リストアップした会社に対して、M&Aに関わる業者が会社名や詳細な情報を伏せて買収を提案します。
この段階で交渉できそうな買い手を絞り込み、秘密保持契約の締結後に改めて詳細な情報を開示します。交渉できそうな買い手が見つからなければ、売却条件の見直しが必要です。
6.トップ面談を行う
トップ面談とは、買い手候補の経営者と行う面談のことです。
トップ面談は、自社の魅力や売却条件、身売り後の経営に関する考えを伝えて、経営方針や価値観などを共有することが目的です。
複数社の経営者と面談をしたり、同じ経営者と複数回の面談をしたりするケースも多くあります。また、工場や店舗を有する場合はデモンストレーションを実施して、現場を見てもらいながら自社をアピールするケースもあります。
面談を実施する際は、買い手に伝えたいことを整理して、質問したい内容を準備しておくことがポイントです。
7.意向表明書を提示してもらう
トップ面談後、双方が納得できたら買い手側からの意向表明書の提示を受けます。意向表明書は、買い手が買収の意思があることを伝えるために提示するもので、買収のスケジュールや買収の理由、売却後の経営における展望などが記載されています。
意向表明書は、次で解説する「基本合意書」の参考資料でもあります。ただし意向表明書の提示は必須ではなく、法的拘束力はありません。
8.基本合意書を締結する
基本合意書とは、売り手と買い手が合意した条件をまとめた文書です。基本合意書には、譲渡価格や売却方法、取引のスケジュール、独占交渉権、デューデリジェンスへの協力やその他の合意条件が記載されます。基本合意書にも法的拘束力はありません。
独占交渉権が付与された場合は、ほかの買い手との交渉が制限されます。
複数の買い手から意向表明書を提示してもらえた場合は、1社に絞り込んで基本合意書を締結します。
9.デューデリジェンスが実施される
デューデリジェンスとは、売り手に簿外債務などの隠れたリスクが存在しないか、またリスクがある場合はどの程度のリスクなのかを確認するための調査です。デューデリジェンスは、売却価格や条件などの契約内容について妥当かどうかを検討するために実施され、各領域の専門家が調査にあたります。
デューデリジェンスによりリスクやトラブルが発覚すると、売却話が中断する可能性が高いため、はじめから負債やトラブルなどをきちんと開示するといった誠実な対応が重要です。
10.最終譲渡契約を締結する
デューデリジェンスを実施したうえで双方がM&Aに合意したら、最終譲渡契約を締結します。最終譲渡契約書には、会社売却に関する条件がすべて記載されており、その中でも特に重要な記載条項が「表面保証」です。
表面保証とは、買い手への開示内容に誤りがないことを保証するものであり、売却後に相違が見つかれば、買い手は売り手に損害賠償を請求できます。
最終譲渡契約書には法的拘束力があります。締結前に内容を入念に確認してください。
11.クロージングを実施する
クロージングとは、買収代金の支払いとM&Aにおける手続きのことです。
手続きに時間を要するケースが多いため、多くの場合、最終譲渡契約から一定の期間を設けてクロージングを実施します。クロージングが完了すれば、会社売却に関する手続きは終了となります。
まとめ
会社の身売りは、後継者が不在でも事業承継ができたり売却益を得られたりと、さまざまなメリットがあります。しかし契約の内容によっては、経営者が一定期間会社に残って働かないといけなかったり周りに迷惑をかけたりすることもあるため、慎重な判断が必要です。
身売りをする場合は、業績が良い時期に買い手を探すことで、期待したような結果を得られやすくなります。会社の身売りをスムーズに進めるためには、M&Aに詳しい専門家への依頼が欠かせません。
M&AならレバレジーズM&Aアドバイザリーにご相談を
レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社は、会社の身売りに関してもあらゆるサポートが可能です。料金は完全報酬型のため、成約まで料金はかかりません(譲受側のみ中間金あり)。無料相談も受け付けているため、会社の身売りについてもお気軽にご相談ください。